オシム

 サッカー日本代表オシム監督はやはり面白い人だ。インタビューなどを聞いていても、あいまいな質問をする記者に対し、「(あなたの言う)良い結果って何ですか」と、「おまえは本当に自分がしている質問の意味を考えているのか」とばかり反問する姿を見ていると、いささか対話法を実践する哲学者にも見えてくる。


 が、この人の本質は、一人ひとりの選手に限界まで走り、頭を使うことを求めるサッカーであろう。要は、優れたタレントを持つスター軍団を対象にしたサッカーではなく、けっして一流とは言えないサッカー選手を対象に、個々人の能力の限界までを発揮させることで、なんとかスター軍団相手にも勝機をうかがうというサッカーこそ、彼の目指しているものに見える。まあ、今の日本にはぴったりの指導者であろう。


 オシムはレーニンの「勉強して、勉強して、勉強しろ」をもじって、「走って、走って、走れ」と言う(が、正直言うと、僕はこのレーニンの言葉も初めて聞いた)。「日本人プレーヤーは本気でサッカーに専念していない。遊んでいる」とも言う。すなわち、自分の人生のすべてをサッカーに捧げきっていないと。いやまあ、しかし、すごい根性オヤジである。


 面白いのは、日本人の多くが、このおっかない根性オヤジに魅惑されていることだ。どうも今の日本人のメンタリティーのどこかに、こういう本気の根性オヤジに怒られてみたいという願望があるらしい。ふ〜ん。


 まあ、そう言う僕も、急に日頃の怠慢ぶりを反省して、やっぱり「勉強して、勉強して、勉強し」ないとだめかなという気がしてしまうのだが。