大学の今昔

 僕が学生だったときを思い出すと、まだあの頃はすべてがのんびりしていた気がする。いくら待っても先生が来なくて自然休講になることも珍しくなかったし、大学の事務室に行くと、まじめに働いているのは数人で、スポーツ新聞を読んでいるおじさんもいた。いや、僕が大学で働くようになったころですら、そういうのんびりした空気は残っていた。ベテランの先生は助手さんたちを秘書代わりに使い、けっこうつまらない雑用までさせていた。やらされる側も、まだそんなに忙しくはなかったので、ぶつぶつ言いながらも、なんとかこなしていた。事務の人も、(少なくとも僕の目から見る限り)、十年一日のように、ルーティンワークをやっていれば、それで良かった。


 それがいつの時期からだろうか、すべてが慌ただしくなった。教員は増え続ける講義負担ばかりか事務仕事に追われるようになった。事務方は事務方で、人数は減らされる一方、仕組みや手続きが年々複雑になるのに対応するので手一杯になっていった。現在など、科研費シーズンなど、残業残業で、見ていても気の毒なくらいだ。まあ、それでも相変わらずぼおっとしている人、騒いでいるばかりで、むしろ他人の迷惑になっている人もいなくはならないけど、ともかく昔より忙しいのは間違いない。


 教員も事務方もかなりひいひいの状況が続くなか、そのうち一人が倒れると、連鎖的に波紋が広がる。誰かがこけるとその分を周りがカバーしなければならないからだ。いったいなぜこうなったのか、今頃言ってもしかたがないのかもしれないけど、あらためてそう思う。