ジャン&マーク

 このシリーズ、最終回はカップルである。二人とも「おじいさん」「おばあさん」な年齢であるが、元気で好奇心を失わないという意味では、とても若い。元々A-sanが知り合い、気に入ってもらって、家族でお宅に招待してもらうようになった。


 マークさんは宣教師の父親につれられて、鹿児島や神戸に長く住んだだけあって、ときどき不思議な日本語を口にしてみんなを笑わす。基本的にユーモアの人である。ジャンさんは、好奇心いっぱいのかわいらしいおばあちゃんで、鋭い質問を矢継ぎ早に繰り出してくる。二人とも大の親日家であり、これまでもたくさんの日本人をホームステイさせてきたという。とはいえ、最近は、アメリカ生活を希望する日本人が減ってきていることに、ちょっと失望している。とくにマークさんは、日本の若者に対し、けっこう手厳しいことも言う。


 あるとき、自分は日本で希望の研究をしている、といったとき、二人がぐっとこちらに身を乗り出してきたことを覚えている。どこか心の琴線に触れたようだ。それから、ずいぶんと深い話をできるようになった。二人の発想はやはりとてもキリスト教的である。あるとき、「希望という概念はキリスト教的だと思うか」と聞いたところ、「そう思う」と答えた。


 二人の重視しているメディアや、とりあげる人物を見る限り、アメリカの文脈でいう明らかな「保守」である。が、ふたりは社会活動に熱心であり、マークさんは神戸で被災者のためのコミュニケーション・スペースづくりに参加したこともあるという。今もイサカでカフェを経営し、そこで各種の催しものを開催している。その意味でいえば、社会的には「プログレッシブ」な活動家である。キリスト教信仰に基づく保守的な価値観をもち、その上で、社会活動的にはプログレッシブであるという、こういうタイプの人もアメリカにはたくさんいるということを、二人のおかげで知ることになった。


 あるとき、二人に「あなたは正しい方向に向かって進んでいると思う。だからがんばってね」と言われたことがある。どういうつもりで言ったのかわからないけど、いまでも少しだけ、心のお守りになっている。