マリッサ先生

 ええ、っと日本に帰ってきました。まあ、いろいろ思うところはあるけど、またおいおい。忘れないうちに、イサカで出会った人々のポートレイトを少しだけ。最初は、Satoの保育園の先生について。


 マリッサ先生は、物静かな先生である(羊さんのような女の先生を想像してほしい)。いつも、静かな調子で、うれしそうな顔をして、情け容赦ない早口でしゃべる。モンテッソリーの学校が一般的にどうなのか知らないけど、一人ひとり自分のペースでやる、子どもに大声で指示を与えない、という原則は徹底していたと思う。お昼寝の時間にいったときなど、部屋が薄暗く、ベートーベンの「月光」が流れていてびっくりした。


 マリッサ先生は、Satoのことを本当にかわいがってくれた。最初から、彼のことを「ビューティフル、ビューティフル」といってほめてくれる。うちではしばらく、マリッサ先生を「ビューティフル先生」と呼んでいたくらいだ(ちなみに、言うまでもないが、Satoはビューティフルというより、愛嬌で生きていくタイプである)。


 東日本震災のときなど、その話を少ししただけで、涙ぐんでハグしてきた。いまだかつて、保育園の先生にハグされたことはない。今後もたぶんないと思う。けっこう体格のいいマリッサ先生にハグされると、とてもインパクトがあった。いい人なんだなあ、としみじみ思った。


 Satoの最後の登園日。最初から、かなりウルウルである。午後、引き取りにいったら、ずっとしみじみ思い出話をしてくれた。最後は、本当に泣き崩れると言う感じで去っていった。Satoは、また明日という調子で、なかのいいメンジーちゃんや、ワイアットくんに「バーイ」と笑顔で手をふっていった。まあ、今後、たぶん二度と会わないだろうなんて、彼にはイメージすらできなかったはずだけどね。まあ、もちろん。