パリの周恩来

 小倉和夫『パリの周恩来』を読む。いま思うと、なんだか不思議だけど、中国共産党の幹部は、周恩来や鄧小平など、フランス留学組が多い。彼らは若くしてフランスに渡り、労働者として働きながら学び、やがて政治運動へと向かう。いわば、中国共産党はフランスで形成されたともいえる。著者は、周恩来らの足取りをパリの中に追っていく。


 それにしても周恩来など、育ちから言っても、性格から言っても、共産主義に向かうタイプには思えないのだが、彼がどのように「不倒翁」と呼ばれるしぶとい政治家に変わっていくのか、秘密はパリ時代にあるはずだ。


 彼らの拠点は、イタリア広場の側のホテルだという。そうだとすれば、僕がパリ時代に住んだアパルトマンから遠くない。


 ヘミングウェーやピカソがくらしたパリは、周恩来や鄧小平がいたパリでもある。ちょっと魅力的な話である。