彗星の仕業

 昨日言及した『ファンから観たプロ野球の歴史』。経営の視点から見たプロ野球通史の本であり、基本的には学術的な記述が続く。


 とはいえ、80年代以降の阪神タイガースの軌跡を「機会損失」の概念で説明するあたり、何ともおかしい。この辺りの叙述では筆もはずんでおり、生真面目な文章の合間に、「(一九八五年の阪神日本一について)この年の勝因は、七六年ぶりに地球に接近したハレー彗星の仕業との説もあるが」などという一文がさりげなく織り込まれる。


 おふざけ調な文章の中で出てくれば、別段驚きもしないかもしれない。ただ、こういうアカデミック調の文章の中で「ぽつり」と言われると、思わずにやっとしてしまう。著者のユーモアの真骨頂であろう。