『対論・異色昭和史』

 鶴見俊輔上坂冬子の対談『対論・異色昭和史』を読んだ。 

対論・異色昭和史 (PHP新書)

対論・異色昭和史 (PHP新書)


 何とも不思議な組み合わせであるが、読んでみてびっくり、上坂は鶴見らの『思想の科学』出身なのだという。上坂というと、右のがんこおばさんというイメージしかなかったが、彼女がトヨタ自動車にいるとき書いたレポートが『思想の科学』で賞をとり、それがきっかけで彼女の物書きとしてのキャリアがスタートしたという。


 二人のやりとりはかなり軽妙でおかしい。妹分である上坂は、鶴見の子供っぽさをからかい、鶴見も怒りつつ、気を許している。つっこみをいれつつあやす上坂の話術を読んでいると、これまでの彼女のイメージもちょっと変わってくる。もっとも彼女自身の意見となると相変わらずで、その点に関しては、まったく共感できないが。


 読んで面白い本であることは間違いないが、何だかこれでいいのかな、という気もする。鶴見の理想は買うが、どうもこの本を読んでいると、若々しいというより、幼児的である。繰り返し登場する彼の左派インテリ批判も、(左派の権威の崩壊した)今となってはちょっとぴんぼけ気味。う〜ん、どう評価かしていいのやら。