柄谷行人

 

 帰り道に、『柄谷行人 政治を語る』という本を読む。僕は長年の柄谷ファンであるが、さすがに近年は往年の輝きはない、との批判を耳にすることも多い。それでも、岩波新書の『世界共和国へ』などを読むと、「やはり、こういうのを書けるのは柄谷だけだよな」とあらためて感心してしまう。


 で、本書である。インタビュー本であるが、柄谷のこれまでの政治とのかかわりについて、かなりつっこんだ議論が展開される。ある意味、政治色のつよい柄谷自伝ともいえる。


 宇野経済学との関係、政治運動から英文学への転回、アメリカでのド・マンとの出会いなど、なかなかにおもしろい。


 60年と68年の政治的意味の違い、中間団体としての国鉄日教組の政治的敗北についての議論にも、はっとさせられる。


 柄谷についての好き嫌いはあるだろう。でもまあ、やっぱり、こういう人って、もうあまりいないよな、とあらためて思った。いや、いい意味で。