磯田光一

 大学の前の古本屋の店頭で、磯田光一の本を2冊見つけた。『萩原朔太郎』と『鹿鳴館の系譜』で、どちらも講談社文芸文庫である。講談社文芸文庫はとてもいい文庫なのだが、すぐに絶版になってしまうのが難点である。この2冊とも前から読みたかった本なので、ちょっとうれしい。


 知らなかったのだが、萩原朔太郎は前橋の出身という。この土地の歴史と、そこで育った朔太郎の人生を重層的に解き明かす。と同時に、漢文学や和讃など、多様な文学ジャンルの交錯のなかに、朔太郎の詩を位置づけ直す磯田の手つきはさすがであり、読ませる。


 『鹿鳴館』の方も、冒頭、「文学」なる観念の歴史的変化を、英語、漢学、日本語の文脈において読み解く。


 まあ、思えば、思想史の手続きと、文芸批評の手続きには、地続きなところがある。優れた文芸批評を読むと、「いいなあ」と思ってしまう。