柳田国男

 鶴見太郎柳田国男入門』(角川選書)を読む。鶴見さんの書かれたものを常々興味深く読んできたが、この本もとても読ませる本である。タイトルが暗示するような、安易な入門書ではない。


 著者の意図は、柳田を中心にある種の思想家群像を描くことにある。今西錦司桑原武夫、周作人、中野重治、石堂清倫など、柳田と縁深い人、あるいは縁深くなっておかしくなかったはずなのに、そうならなかった人を、描いていく。かならずしも、柳田を引き立たせるため、彼の影響力の大きさを示すための人選ではない。むしろ、著者は、柳田という人を中心に、ある知的な地図を描き直そうとしているように見える。


 文章は声高ではないが、説得力がある。いい本だと思う。僕自身は、いまだ柳田の文体は苦手であるが、今一度、彼の全集を読み直したいと思った。