ヒューム最終回

 半年間読んできたヒュームについての講読ゼミも最終回。かなりクセのあるこの思想家になじんできたところなので、ちょっと残念である。


 今日読んだのは「完全な共和国」をめぐるヒュームの構想。いきなりその冒頭、なぜか船の話が出てくる。「ホイヘンスの発見により、いかなる船の形態が最善かという論争に終止符が打たれた」という。素直に読めば、自分の構想によって、政治体制についての論争にけりをつけてやるぞ、という彼の自負の表明に見える。


 が、そういっておきながらすぐに、「といっても、そんな発見の前からコロンブスやドレークは遠洋にのりだしていたんだけどね」と来る。まあ、理論と現実とは別というわけだ。こういう、何かをいっておきながら、「とはいってもね、、、」とがっくりさせるのが、いかにもヒュームらしい。


 まあ、たしかに船にのって大海原のうえで、「いかなる船が最善か」と論じても始まらない。海の上で船の改造をしていたら、それが完成する前に、波にひっくり返されてしまう。とりあえず、あり合わせのもので、目の前の危機を乗り越えていかねばならない。


 一方で、抽象的な理想を語りつつ、「といってもね、理想どおりにはなかなか、、、」とうそぶくヒューム。こういう彼の語り口をどう受け止めるかによって、彼の評価も変わってきそうだ。