ヒューム

 僕の先輩の研究者で、自分の研究している思想家について、「どうも、自分より頭の悪い人を研究するというのもなあ」とおっしゃっていた豪傑がいる。かなりすごい発言だと思うけど、たしかにその人はうんと頭のいい人であり、その思想家は、なんというか、「頭の良さ」とは違う次元にすごさのある人物だった。


 今年のゼミで読んでいるヒュームは、むちゃくちゃ博識で、頭のいい人である。細かい部分まで念入りにしかけのある文章であり、読んでいて、退屈することがない。


 ただ、このヒュームという人、賢くて博識なのだが、文章が理路整然としていて、一読明解というタイプではない。賢くて博識で、議論の切れ味も鋭いのだが、なぜか議論がごたごたしているのである。


 細かい部分まで念入りに書かれていながら、どうもごたごたした印象の文章。そのニュアンスを楽しみながら読んでいけるといいなあ、と思う。