医療崩壊

  最近、「医療崩壊」という言葉をよく耳にする。自ら医師である小松秀樹さんが書いた『医療崩壊』という本が出所である。医療ミスを社会的に指弾され、訴訟に悩まされる一方、勤務時間は長く、報酬的にも報われない医師たちは、ぎりぎりの状態で現場を維持している。しかしながら、現状は崩壊に向かいつつある。緊急医療に従事する医師の数は減り続け、病院から医師がいなくなっている。


 小松さんの近著『医療の限界』は、この問題をさらに、日本人の死生観の変化、医療と司法、医療の場に市場原理を持ち込むことの危険性といった視点から考察を進めている。医療ミスの報道があると、ついつい反射的に「医師はなっておらん」などと思ってしまう僕自身であるが、反省をせまられた気がする。


 昨日の研究会でも、先端医療実験の話から混合診療の話にまで議論が展開した。何を市場の論理に委ね、何を委ねるべきではないか、ぎりぎりの思想的な戦いが現実の舞台で戦わされているのが医療である。