新春の読書

 まあ、よくわからないけど忙しい。ところで、この年末年始に読んだ本の中で面白かったのが、中村敏雄『オフサイドはなぜ反則か』(平凡社ライブラリー)。その道では名の知られた名著であるが、僕は今回はじめて読んだ。


 サッカーやラグビーなどにあるオフサイドというルールは、アバウトに言えば、自分より前にいる味方(でかつ、どの敵のプレーヤーより敵陣深く入り込んでいる)にはボールをパスしてはいけないという決まりである。これらのスポーツは、ボールを敵陣のゴールまで持って行かないと得点できないのだから、前にいる味方にパスできないというのは、理不尽なルールに思える。なぜこのようなルールが成立したのか、中世以来の慣行に遡って追究していくのが、本の趣旨である。


 興味深いことに、オフサイドはイギリスの生まれのスポーツの特色であり、アメリカ生まれのスポーツは、アメフトにせよバスケにせよ、オフサイド・ルールは消滅したか、きわめて縮減されている。あきらかにオフサイドには社会的・歴史的背景があるのである。


 このことを考えるために、ときに民俗学、ときに学校教育史、あるいは社会交通史、さらには政治人類学を援用していく議論は、実にダイナミックである。サイードが出てきたり、ウェーバーが出てきたり、社会科学をやっている人間にとって、読み応えがある。問題提起もいいし、まことに学術研究の鑑である。


 あ、いかんいかん、ちゃんと読まないと行けない本は他にあるんだった。いかんいかん、いやはやいやはや。