宮沢元首相死去

 宮沢喜一元首相が亡くなった。数日前に彼のオーラルヒストリー本を読んだばっかりだったのでちょっと驚いた。合掌。


 でも、彼のオーラルヒストリーは、竹下登元首相ほどはひどくないが、読んでいてとても面白い、というものではなかった(一番おもしろいのは何といっても後藤田本である)。やはり政治家として、生前に話せる内容は限られるのだろう。とくに政策がらみの話はできても、政局がらみの話はやりにくいというのは想像できる。ということで、政局面での活躍の比重が大きい人ほど、オーラルヒストリーはつまらなくなるのは自然である。竹下さんの本なんて、ほんとうに、この人にとっての政治って、これだけなのか?と思わざるを得ない。具体的な人とのやりとりを抜きに、ひたすら彼流の気配り法を説明されると、ちょっと辟易である。


 それに比べれば宮沢さんは政策の人だから、いろいろ話せるはずなのだが、どうも今ひとつ面白くない。サンフランシスコ条約など、歴史的場面につねに居合わせた人だけに、ちょっと残念である。基本的にはまっとうな人であり、それぞれの政治的問題にきちんとした無理のない答えを出せる人だったと思う。対アメリカ外交を軸に日本の国際関係を捉え、憲法9条を尊重し、軽武装経済国家を目指す戦後の保守本流のエッセンスのような人であった。僕としてはとくに強く評価する政治家ではなかったが、やはりいると安心感のある政治家ではあった。現在の政治家たちをみると、しみじみそう思う。