朝日とル・モンド

新聞 資本と経営の昭和史 朝日新聞筆政・緒方竹虎の苦悩 (朝日選書824)

新聞 資本と経営の昭和史 朝日新聞筆政・緒方竹虎の苦悩 (朝日選書824)

  今西光男『新聞 資本と経営の昭和史』を読む。新聞を経営の側面から読む、という視点がおもしろい。とくに朝日新聞がいかに発展し、そして戦時期に権力に屈服していったかを、その「筆政」(主筆のことを昔、そう言った)であった緒方竹虎に注目して描いている部分は、読み応えがある。


 この本、朝日選書から出ているし、書いているのも朝日の記者OBの人らしいが、その書きぶりはかなりシビアである。とくに、社主である村山家や、戦時中の戦争協力など、朝日の恥部にストレートに切り込んでいるのは、好感が持てる。


 しかし、このような本が出るのも、新聞がいよいよ経営的に難しい時期に突入し、企業形態そのものについても根本的な見直しを迫れていることの証であろう。少なくとも、このままの形で、今の大新聞体制が続くとは、もはや誰も思っていない。


 そういえば、フランスでも『ル・モンド』の混乱振りはかなりひどいようだ。大統領選をめぐる内紛であるが、背景に深刻な経営難があるのは言うまでもない。この前パリに行ったときにも感じたが、フリーペーパーがやたら目立つようになった。フリーペーパーがおすサルコジが勝って、『ル・モンド』がおしたロワイヤルが負けたというのは、きわめて象徴的であると思う。