フランス大統領選

 フランス大統領選が間近になった。今晩のクローズアップ現代でもやっていたが、ここに来て、サルコジとロワイヤルという本命二候補の正面対決という構図になりつつあるようだ。ここ10年ほど、本命候補の政策が接近し、あまり違いがなくなったことから、不満票がそれ以外の候補に流れ、前回のようなルペンの決選投票進出という事態も生じてきた。それと比べると、今回は、実に争点がはっきりしている。


 保守系サルコジは、元々は強面を売りとし、セキュリティー強化を主張しているイメージが強かったが、今回の選挙では、ネオリベラル的な色彩を前面に出している。フランスの国際的競争力の低下への危機感をあおり、「手厚すぎる」フランスの労働者保護を批判して、競争促進のための自由化を訴える。これに対し、ロワイヤルは伝統的な労働者の権利保護を訴え、男女の平等な社会参加を可能にするための社会保障維持を政策の主眼にすえる。


 このように、対立図式がきわめて明快なのは結構なことだと思うけど、こういう対立図式はサルコジ主導の下で形成されているなあ、という印象はぬぐえない。とくにロワイヤルの場合、既成の政治エリートとは一線を画した新鮮さが売りだったのに、このような対立図式においては、伝統的な福祉国家路線の擁護者というイメージに追い込まれている。ロワイヤルの劣勢は、そのあたりに原因があるのだろう。


 あと面白いと思ったのは、サルコジの選挙キャンペーンのスタイルが、きわめてアメリカ大統領選的であること。ある意味、サルコジは意図的にアメリカン・スタイルを演じ、ロワイヤルの伝統的なフランス・スタイルを浮き上がらせている。伝統的なフランススタイルからの脱却というのも、隠れた争点になっているようだ。