宮崎駿

 昨日の晩、NHKの『プロフェッショナル』で宮崎駿の特集をやっていた。若いプロデューサーがはりついて、長期にわたって密着取材を続けたものだという。


 まあ、このおじさん、機嫌良く好きな話をしているときはともかく、実際に製作がはじまれば不機嫌になるだろうし、自分にも他人にも求めるものが大きい分、とっても厳しい人になるだろうというのは、予想できた事態だったが、ある意味、予想以上の不機嫌ぷりが面白かった。僕もしばしばこの手の人のそばにうかうかと近づき、その地雷を踏んでどっかんと怒られるタイプなので、このディレクターに同情しなくもない。


 でもねえ、この番組を見ていると、途中の茂木なんとかさんとアナウンサーの人の質問にせよ、このディレクター自身の質問にせよ、「伝えたいメッセージは?」とか「やはり孤独になることが必要か」とか、あまりに紋切り型というか、何も考えていない質問の連続で、見ていてはらはらしてしまった。いくらなんでも、ありゃ、地雷踏みまくりだよ。とりあえずレスポンスしてくれただけでも、宮崎駿は大人だなあ、と思ってしまった。


 あと、宮崎の息子吾朗の作った『ゲド戦記』を見てのいらだちぶりも興味深かった。実は僕はこのアニメ、まだ見ていない。原作のファンである分、どうも映画をみるのを躊躇してしまうのだ。しかも、原作者のル=グウィンが、宮崎自身が作らなかったことにも、またできあがった作品のできばえについても、かなりの失望を表明していると聞くと、ますます躊躇してしまう。彼女のメッセージを読むと、「善意なのはわかるが、身に付かないことを登場人物に語らせ、結果として説教臭くなってしまっている」というようなことが書いてあり、何となく作品が予想できてしまうのも、厳しいところだ。宮崎も激しい不満を感じているのだろう。それは肉親である分、さらに激しいものになる。見ていて、ああ修羅だなあ、と思ってしまった。