村上春樹の新訳、『ロング・グッドバイ』を手に取る。解説から読み始めたのだが、チャンドラーについてのある評論家の言葉「unselfconscious eloquence」を「自意識を抜きにした雄弁」としているのに、「おおおー」と思う。なるほどね。上手い訳だなあ。


 ある仕事でトクヴィルの議会演説を訳しているのだが、「Messieurs」を「諸君」と訳すか、「みなさん」と訳すか、はたまた「議員諸氏よ」と訳すかで、トクヴィルのイメージも変わる。どうも、僕の訳だと、なんとなく線が細くて、弱そうなトクヴィルになるなあ。