80年代

 行き帰りの電車は大切な読書時間だが、今日の帰り道には、昼間の英文雑誌の編集委員会で話題になった原宏之さんの『バブル文化論 <ポスト戦後>としての一九八〇年代』(慶應義塾大学出版会)を読んで帰る。


 原さんは1969年生まれというから、まあ、僕とほぼ同世代。原宿の竹の子族の話からはじまって、『ふぞろいの林檎たち』、そして、とんねるずおニャン子の分析で終わるこの本、まさに僕のティーンエイジから大学生の時代を対象としている。一方で当時の風俗についてかなりマニアックな叙述をしつつ、他方でわりとかたい社会学的というか表象論的な分析を織り交ぜる、なんだかアンバランスな文体が印象的である。まあ、最近なぜか1980年代論がさかんであるが、その中ではアカデミックな方の本なのだろう。


 いやあ、しかし、なんだか恥ずかしい時代だな。原さんは1980年代を「貧しい時代」と言い切っている。しかし、その割に、時代の風俗のディテイルの書きっぷりは、「こんな時代を生きちゃった俺、とほほ」という感覚とともに、なんだかうれしそうでもある。このあたり、多少世代が下である北田暁大さんの書きっぷりの方が突き放しているような気がするが、、、