いかんいかん

 停滞していた事務仕事と翻訳を一気に進めようとはりきってとりかかったが、ついつい他のものに目移りしてしまう。


 ここのところ別に理由はないのだけれど吉田茂についてなんとなく興味を感じ、高坂正堯の『宰相吉田茂』を取り出してきて「ふ〜ん」と読んだり、吉田の側近だった白洲次郎についての本を読んだりしていた。ちなみに世の大半の白洲本が「ダンディでかっこいいおじさん」としての白洲に注目する本であるのに対し、北康利『白洲次郎 占領を背負った男』は、むしろ彼の政治的行動、とくに憲法制定過程における活動をていねいに調べた本であり面白かった(ケーディスらニューディーラー左派の集まる民政局と戦い、反共の参謀二部のウィロビーに接近した吉田や白洲の政治的判断をもっぱら正義の戦いであるかのように描いているこの著者の政治的スタンスにはかなり不満があるが)。


 白洲は近衛やその側にあつまった松本重治などとも親しかったわけだが、そこからの連想で『丸山眞男回顧談』の「重臣リベラリズム」批判の部分をもう一度読み直す。親米リベラリストとしての印象の強い松本に対して、丸山の評価はけっこう厳しい。「重臣リベラリズム」との決別によって戦後丸山の政治的スタンスが決定されるというのは、やはり興味深い論点である。


 中野剛充さんの『テイラーコミュニタリアニズム』も手に取ると、ついつい読んでしまう。う〜む、まったく仕事が進まないのだ。いかんいかん。