メトロン星人

 近所の神社に初詣に行った以外は、家にいる。Daichiにつきあって、すごろくをするのも、トランプをするのも、さすがにしんどくなってきた。ということで、年末に借りてきた『ウルトラマンマックス』のDVDを見せてごまかす。


 このシリーズ、一緒にみている親の世代もターゲットにしているようで、昔見た『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』に出てきた怪獣や宇宙人がよく再登場する。今回はメトロン星人。知ってる人は知ってるだろうが、オリジナルでは、夕焼けの中でメトロン星人ウルトラセブンが戦う風景がとても美しく、子供心に強い印象が残っている。


 今回は、そのオリジナルの方を意識して、製作者たちが完全に遊んで作った作品のようだ。特撮ものなのになぜか刑事が出てきて配役が六平直政メトロン星人が人間になるときの配役が寺田農、といい役者さんを使っている。メトロン星人は根津あたりを思わせるレトロな町を逃げ回り、最後は時代もののアパートの一室へ。主人公(カイト隊員)に、「地球を侵略するため、携帯電話に細工をして地球人を狂わせようと電波を流したが、よくみたら、そんなことをしなくても、携帯電話を使う地球人たちは完全にアホになっていたので、その必要もなくなり宇宙に帰る」という。電車内で傍若無人な若者や大人の姿の映像がそこで挿入される。ここらへんは新書の『ケータイを持ったサル』を意識している様子。


 そんならさっさと帰れというカイト隊員に、「そうせかすなよ」というメトロン星人、「おみやげくらい持たなくちゃ」と、なぜかトイレ詰まりを直すための道具と、永谷園のお茶漬けと、メトロン星人のミニチュアおもちゃをかばんにつめる。「じゃあ」と、こちらの期待通り、夕焼けの風景の中で巨大化する。しかし現れたウルトラマンマックスが戦おうとすると、「いやあ、夕暮れは美しいねえ。日本の夕焼けはとくにいいね。陰影礼賛ってわけだ」とうそぶいた上で、あっさり円盤に乗って宇宙に帰ってしまう。ウルトラマンマックスはぼうぜんと立ちすくみ、しかも手を振られて、つられてバイバイしてしまう。


 Daichiは、「え〜、戦わないの〜」と不満そうだけど、親の方はとても笑えたのだ。監督はこの前亡くなった実相寺昭雄。やるなあ。