フランクリン

 講義のあと、ふと立ち寄った古本屋で買ったのが平川祐弘『進歩がまだ希望であった頃』。二百円であった。以後、電車の中で読んでいく。タイトルに惹かれてこの本を買ったが、その内容はフランクリンと福沢諭吉の比較研究なんだね。二人の啓蒙家にして自伝執筆者。そういわれてみると似ている点が目立つ。


 『福翁自伝』ファンも多いが、僕は『フランクリン自伝』も好きである。いかにも俗物的な立身出世物語にも、はたまたウェーバー風なプロテスタンティズムの典型例にも読めるこの本だが、独立期アメリカの雰囲気が生き生きとして描かれていて、楽しく読める。


 そういえば、今読んでいる『ザ・フェデラリスト』の執筆者たちにとって、フランクリンは一回りも二回りも上の世代にあたる。社交的で、ヨーロッパの外交舞台で大活躍する一方で、浮き名を流したり、どうもアメリカの文脈に収まりきらなかったこの怪老人を、下の世代の人間たちはどのように見ていたのだろうか。頼りにもなるが、今ひとつ信用できない困った人、といったところか。


 アメリカ独立期の人物群像はとても面白いが、フランクリンはその中でもかなり傑出した人物であることは間違いない。