梨木香歩

 いろいろなところに電話して、あやまって、それからお願いして、、、というような調子で、一日がはじまる。たいへん活発かつ前向きな一週間のはじまりである。とほほ。


 それはともかく、行きの電車で梨木香歩『ぐるりのこと』を読む。最近、行きの電車ではスポーツ新聞を熟読することが多かったが、ようやく少し落ち着いた日々が戻ってきた。この梨木さん、昔『考える人』で連載を読んだとき、「いい文章だなあ」と感心した。しかし、その後彼女の本を何冊か読んだがあんまりぴんと来ず、『裏庭』などもどっかで読んだような気がして、うまくその世界に入り込めなかった。で、最近『考える人』での連載をまとめた『ぐるりのこと』を見つけ、再度チャレンジしてみたわけだ。


 で、感想としては、やはり、よく考えられた文章だと思った。児童文学風の文体、エッセイ風文体、社会評論風文体が、自然に結びついている。静かな、押しつけにならないトーンではあるが、ハードでしんどい現実に対し、言うべきことは言っている。正直なところ、前に読んだときほどの驚きはなかったけれど、こういう文を書く人が現代日本にいるということは悪いことではないな、とあらためて思った。