父親

 田舎から出てきた父親と会う。というと、小津安二郎東京物語の世界みたいに聞こえるが、この父親、仕事で月に何度も上京してくるのだから、ちょっと話が違う。70代半ばの人が、月に何度も飛行機にのって移動するというのは、どう考えても体によくないのだが、本人が望んでやっているのだから、仕方がない。午前中、用事につきあい、昼飯を一緒に食べる。この歳になって、平日の昼間に、父親とさしでメシを食べるというのは変な感じ。何をしゃべっていいものか、ちょっととまどう。


 僕が小さい頃、父はおっかない存在だった。最近は、Daichiを連れて会うことが圧倒的に多いので、そういう時は単なる好々爺、という感じだが、平日昼間にオフィス街で会うと、ちょっと昔の印象がよみがえる。なんとなく、子供の頃、デパートの屋上の食堂に連れて行ってもらったことを思い出す。


 僕はどう転んであんなおっかない父親にはならないだろうな、と思いつつ、父親と息子がさしでメシを食べるというのはいつの時代も、どこかしら緊張感のあるものかもしれない、と思った。