シカゴ空港

 実は今週、ボストンとニューヨークに出張する。4泊6日の強行軍である。が、問題は行きのボストンまでで、途中シカゴで乗り継ぎということになる。このシカゴがとくに問題なのだ。冬のシカゴはよく空港閉鎖になるという。そうなったら、たいへんだ。しかも、僕にはシカゴ空港と因縁がある。


 フランスに留学したときのことである。フランスに行く前、カナダのケベックで開かれた政治思想学会に出席することにした。が、ケベックへの道は遠く、まずシカゴに行き、そこからトロントへ、そしてケベックへという道筋になった。ところが、このシカゴからトロントに行く便が天候のため欠航になったことから、ひどい目にあったのだ。ユナイテッドの職員は、カナダ航空が振替便になるというのだが、カナダ航空のカウンターに行くと、人々が殺到していてそれどころではない(実はこの日カナダ航空のストがあったということを後で知った)。泣きそうになりながら、3、4時間必死にかけまわり、運良く飛ぶことになったトロント行きの便に潜り込むことができた。しかし不幸は続いた。トロント空港には、シカゴで預けていた荷物が届いていなかったのだ。仕方ないので、紛失届けを出し、ケベックでの滞在先の住所を書いて、手ぶらでケベックに行くことにした。が、である。実は今度はトロントケベック行きが、何時間待っても出発しない。結局、真夜中になって出発しないことが確定し、散々掛け合った末(実は自分で掛け合ったのではない。トロント空港で出会ったK大学のI先生に、すっかり、助けてもらった)、手配されたホテルに行き、一夜を過ごした。ようやく翌朝飛んだ飛行機でケベックへ。しかし、ケベックでは何日待っても荷物は届かなかった。カナダ航空にいくらかけあってもらちがあかない。ユナイテッドから引き継いでいないというのだ。仕方なく、帰り道、今度はケベックからトロントへ、そしてシカゴへと、行きと逆の道順で戻るみちすがら、各空港で聞いてまわるが、どうしても見つからない。各空港でフランスでの滞在先を届けて、フランスへの道を急ぐことにした。しかしながら、二度あることは三度ある。今度はトロントからシカゴ行きの便が遅延し、シカゴからパリへの便に乗り遅れてしまったのだ。巨大なシカゴ空港を必死に走ってパリ行きのカウンターにたどり着いたとき、無情にも機体はするすると動き出したところであった。へたり込みそうになるのをこらえ、職員に泣きつくと、「待ってろ」と言い、どこかに消えた。それから待つこと1時間。現れた職員は、「ロンドンに行け」という。「大丈夫かなあ〜」と思うが、もはやそれにすがるしかない。しかも不安をあおるのは、ロンドン行きのチケットはもらったのだが、ロンドンからパリへの乗り継ぎ便については、紙切れ一枚しかくれなかったことだ。結局、ロンドンに行き、その後パリにも行けたのだが、しかししかし、最後まで運はなかった。荷物を無くした僕は、ケベックのGAPで最低限の衣類と鞄を買い、それと後生大事に肌身離さずもっていたマック(しかしケーブルはトランクのなかに入っていた)を持って旅を続けたのだが、なんとロンドンのヒースローでは、この最後のなけなしの荷物まで機内持ち込みを禁じられ、預けさせられたのだ。結果はというと、この最後の荷物もパリのドゴール空港のカウンターには現れなかった。もう本当に泣く涙もかれはて、空港職員にすがりつくと、またされること数時間、なぜか空港のまったく別の場所で荷物を発見したとの連絡を受けたときは、もう何も言う気力をなくしたのをおぼえている。


 ああ、思い出し始めたら、一気にこれだけ書いてしまった。やはりシカゴ空港は鬼門なのだ。今度は何もないといいなあ、、、