官邸主導

 他にいろいろやることがあるはずなのに、清水真人『官邸主導』(日本経済新聞)をついつい読んでしまう。なかなか面白かった。小泉改革の意味を、この10年の一連の「改革」の流れの中に位置づけたもの。要するに、小選挙区制度や内閣機能の強化など、この10年をかけて強化した官邸主導のための仕組みの制度を小泉が驚くほど巧みに活用し、従来のボトムアップ型の政治、あるいは政府と与党との二重権力システムを破壊したという話。多くの証言をちりばめ、読ませる。


 その意味では、小泉はこの「改革」の10年の帰結であるわけだが、小泉を含め、その登場人物たち一人ひとりをみると、歴史的必然というよりたぶんに偶然的要素が大きい。かつて竹中平蔵が、ロシアの経済改革で活躍した経済学者のサックスを見て「あんなふうになりたい!」といった話など、興味深い。


 いいにつけ、悪いにつけ、小泉は官邸主導を実現したが、個人商店的色彩が強く、今後どうなるかわからないと著者はいう。官邸主導という仕組みがどこに向かうか、それが問題だ。