石川真澄

 石川真澄『人物戦後政治』(岩波現代文庫)を読む。石川真澄というと、僕が大学生の頃、朝日の代表的政治記者だったというイメージしかない。しかし、今回、彼が実際に会った政治家たちの風貌を伝えるこの政治家スケッチ集を読むと、やはりなかなかの人だったんだな、ということがわかる。


 ひと昔まえの政治記者というと、ひたすら政治家に食い込み、なかば政治家の「身内」になってしまう人たちが多かったと思う。しかしながら、石川は、特定の政治家に密着するより、どの政治家とも距離をとりつつ、それでも「これぞ」という人には一通り自分で会ってみて、その「品定め」をしているように見える。


 書かれている内容も、単なる人物エピソードというより、戦後日本政治の大きな構造を浮かび上がらせることを主眼としている。民社党を作った西尾末広の記述など、その人となりとあわせ、興味深い。


 昔の朝日の優れた記者には、いい意味で、素人っぽいというか、書生っぽい人が目立った。石川にもそんな時代の空気を感じさせる記者の一人である。