ゼミのスタイル

 ゼミのやり方というのも、いろいろなスタイルがあるのだろう。同じ思想系でも、僕の師匠にあたるS先生のゼミでは、先生の提起する問題はつねに抽象的であり、参加している学生の議論についても、それがはたして先生の想定しているポイントに合致しているのか、していないのか、どうもよくわからなかった。つねに一定程度のあいまいさが維持される、そういうスタイルが印象的だった。


 逆にW先生のゼミは、先生が投げかけてくる質問はつねに明確であり、正解・不正解がはっきりしていた。W先生の意図は、明らかに「職人としての研究者」養成にあり、およそその道の研究者として必要な知識、研究手法の習得に重きが置かれていた。逆に、そのような知識や手法さえマスターしていれば、あとは何をどう論じようと勝手、という感じだった。



 自分のスタイルは、となると、S先生に近い気がする。ただし、S先生の場合、かなり意図されたあいまいさであったのに対し、僕の方は結果としてあいまい、という気もするが。



 結果として、参加者がいろいろ考えてくれれば、それでいいと考えている。とはいえ、何を、どう考えてもらうか、ゼミのもって行き方については、いまだ試行錯誤である。なかなか、これというスタイルは見つからないなあ、とあらためて感じる.